Epistra
AI を価値に変え、共にユーザーへ届ける — EVIDENT「FLUOVIEW Smart」× Epistra の共創
2025/11/18

AI を価値に変え、共にユーザーへ届ける — EVIDENT「FLUOVIEW Smart」× Epistra の共創

EVIDENT (オリンパス)

導入の背景

  • 「FLUOVIEW」は高性能かつ多彩な機能を備えたレーザー走査型共焦点顕微鏡であり、熟練の研究者にとっては非常に強力なツールとして世界中の研究機関で活用されている。
  • 一方で、初心者が操作に習熟するまでのハードルが高いという、高機能な研究機器ゆえに直面する課題を抱えていた。

導入後の効果

  • UX/UIの再設計に加えて、顕微鏡操作のワークフローをAIで支援する新機能「FLUOVIEW Smart」を共同開発。
  • 従来は数分かかっていた設定作業が、1クリック・1分以内で完結。初心者でも”迷わず成果”にたどり着けるUXを実現した。
  • “誰が操作しても変わらない作業”をAIで自動化することで、熟練の研究者がより創造的な研究活動に集中できるようになった。

高性能な共焦点レーザー顕微鏡「FLUOVIEW™️」は、細胞や組織の観察において世界中の研究者に利用されています。その一方で、高い性能と多彩な機能を備えるがゆえに操作や設定には一定の習熟が求められ、初心者にとっては慣れるまでに時間がかかることもあります。これは高機能な研究機器に共通する課題であり、FLUOVIEW™️も例外ではありません。このような状況を踏まえ、EVIDENTはエピストラと連携し、AIを活用した新しいユーザー体験の実現に挑みました。その成果が、2025年に発売された新モデル「FLUOVIEW™️ FV5000」に搭載された「FLUOVIEW Smart™️」です。両社が目指したのは、単にAIを導入することではなく、「研究者が【迷わず成果にたどり着ける】体験」を製品として形にすること。今回は、このプロジェクトを統括し、エピストラとの共創を推進された 株式会社EVIDENTの瀧本 真一さま(Vice President, Head of R&D for Life Science)に、その開発の背景と共創の舞台裏を伺いました。

「使いこなすまでのハードル」の改善が、裾野を広げるためのカギだった

まず、瀧本さんの現在のEVIDENTでの役割について教えていただけますか。

R&D部門でライフサイエンス関連の顕微鏡開発を統括しています。研究開発の立場として、光学技術を中心に据えながら、そこにデジタル技術やAI技術といった先進技術を組み合わせることで、お客さまが抱えている課題や困りごとを解決し、新しい価値を提供できるよう日々取り組んでいます。

「ユーザーに新しい価値を届ける」という思想を体現しているのが、御社のフラッグシップ製品「FLUOVIEW」だと思います。改めてどのような製品か教えていただけますか。

「FLUOVIEW™️」は、一般的には「レーザー走査型共焦点顕微鏡」と呼ばれるタイプの顕微鏡です。少し堅い名前ですが、細胞や組織の微細な構造を高解像度かつ立体的に観察できることから、ライフサイエンス研究では欠かせないツールのひとつとなっています。1980年代に初めて商品化されて以来、世界中の研究機関や大学、製薬企業などで活用され、発生学や神経科学、再生医療といった広い分野で多くの成果を支えてきました。

当社(旧オリンパス株式会社)も1996年に初めてFLUOVIEW™️シリーズを発売して以来、光学性能だけではなく操作性や拡張性の面でも改良を重ね、進化を続けてきました。こうした積み重ねにより、現在では当社を代表するフラッグシップモデルとなり、多くのお客さまから「FV」という愛称で呼んでいただいています。細胞内で起きている現象を「見える化」する研究において、FLUOVIEW™️によって初めて観察できたというケースも数多く報告されています。

FLUOVIEWが高性能で、かつ多彩な機能を備えた顕微鏡であるがゆえに、実際の運用では課題もあったと伺っています。

そうですね、課題はいくつかあると感じています。ご指摘のとおり、FLUOVIEW™️は多くの機能を持っており、熟練された研究者の方々にとってはパワフルなツールです。研究のさまざまな要望に応えられるというのが、大きな特長の一つだと思います。

一方で、これから顕微鏡を使い始めようという初心者の方々にとっては、機能が多すぎて「どれをどう使えば自分の欲しい画像にたどり着けるのか」「そもそもどうやって画像を出すのか」といったところで戸惑われるケースが少なくありません。結果として、立ち上げや設定に時間や手間がかかってしまい、いわゆるライトユーザーの方々にとっては大きなハードルになっていました。

FLUOVIEW™️は多くの研究者にお使いいただいている一方で、この「使いこなすまでのハードル」を越えていかないと、より広く使っていただける製品にはならない。そこをどう改善していくかが、今回の取り組みを考えるうえでの大きなきっかけになりました。

1クリック1分以内のユーザー体験 ── FLUOVIEW Smart のインパクト

なるほど、熟練者には強力だけれど初心者には難しいということですね。その課題に対して、どのように解決しようと考えられたのでしょうか。

まず意識したのは、初心者の方々を中心にユーザー体験(UX)をどう改善していくかという点でした。単に機能を追加するのではなく、操作全体の流れを見直して、より自然に目的の画像にたどり着けるような仕組みが必要だと考えました。

アプローチとしては大きく2つありました。ひとつは、いわゆるソフトウェアの見た目や構成を整理し、シンプルで直感的に操作できるようにすること。もうひとつは、操作のワークフローそのものを変えていくという点です。

とえば、従来ユーザーが手動で行っていた設定を自動化したり、不要なステップをなくしたりといった形で、操作プロセス全体を最適化することを目指しました。そのうえで、そうしたワークフローの設計を支援するツールとしてAIを活用できないか検討していったのが今回の取り組みの出発点です。

そうした検討を進める中で、以前から連携していたエピストラさんと本格的に協業し、AIを活用した新しい機能を「FLUOVIEW Smart™️」として製品化することができました。

FLUOVIEW FV5000 詳しくは、FLUOVIEW Smart™ ホワイトペーパー(株式会社エビデント)ご覧ください。

実際にこの開発では、どのような成果が得られたのでしょうか。

「FLUOVIEW Smart™️」は、2025年10月29日にリリースされた新モデル「FLUOVIEW™️ FV5000」に搭載されています。

今回の開発を通じて大きな成果だったのは、これまで時間と手間がかかっていた操作を大幅に簡略化できたことです。従来、初心者の方が画像を撮るまでに数分、あるいはそれ以上かかっていた作業が、1分以内で完了できるようになりました。また、複数の手順を踏まなければならなかった操作も、ワンクリックで完結するようになり、初心者やこれから顕微鏡を学ぶ方々でも迷わず使えるようになったと感じています。

開発段階から多くのお客さまに試していただき、「ここまでシンプルになるとは思わなかった」「AIアシストの使い勝手が良い」といった声を数多く頂きました。私たちとしても、これまでのFLUOVIEW™️の強みを生かしながら、より多くの研究者に使っていただける製品へと進化させることができたと実感しています。

FLUOVIEW Smart のAI支援で顕微鏡観察の効率化を実現
FLUOVIEW Smart™️ のAI支援で顕微鏡観察の効率化を実現

これまでの製品価値はそのままに、AIによる新たな付加価値を形にできた

初心者だけでなく熟練者の々からも高い評価があったと伺っています。

おっしゃる通りです。今回の開発は「初心者でも【迷わず成果にたどり着ける】ようにする」ことを主軸に置きながらも、熟練者の方々に納得して使っていただけることを同じくらい重視しました。長年FLUOVIEW™️を使い込んでくださっている研究者の方々にとって、機能をただ減らすだけの簡略化では、本当の意味での進化にはなりません。そのため、どの機能をどの程度自動化すべきか、どの部分はあえて人の操作を残すかについて、社内外のフィードバックをもとに何度も議論を重ねました。結果として、熟練者がこれまで培ってきたスキルを損なわずに、「誰が操作しても変わらない作業」をAIが肩代わりすることで、研究者がより創造的な部分に集中できるようになった。まさに、熟練者にも初心者にも嬉しい製品に仕上がったと感じています。

(小澤)今回のFLUOVIEW Smartでは、「使いこなすまでのハードル」を下げながら、本来の製品価値を損なわずに裾野を広げた点が大きなポイントだと思います。僕自身も以前FLUOVIEWを触ったとき、設定の多さに圧倒され、これは自分には無理かもと感じました。高価な装置であるがゆえに心理的なプレッシャーも大きく、初心者にとってはほんの数分の操作が大きなハードルになる。だからこそ、最初の一歩を安心して踏み出せるFLUOVIEW Smartの価値はとても大きいと感じます。

まさにその点は、私たちも強く意識していました。実際、ユーザーの々からも「最初の一枚を撮るまでが怖い」「何も見えないと不安になる」といった声を多くいただいていました。

今の共焦点顕微鏡は、立ち上げた瞬間は「真っ暗な宇宙空間」のような画面なんです。そこに無数のパラメータや操作パネルが並んでいて、「さあ、ここから画像を出してください」と言われる。経験者であれば手順を知っているので問題ありませんが、初心者の方にとっては何をどうすれば良いのか分からず、不安で手が止まってしまう。

私自身、初めて顕微鏡を操作したときに同じ気持ちを味わいました。だからこそ、「最初に画像が見えた瞬間の安心感」をどう設計に取り込むかを重視しました。FLUOVIEW Smart™️では、AIによってユーザーが【迷わず成果にたどり着ける】ことを一つの価値として形にできたと考えています。

「このチームは確かに結果を出す」 ── 信頼の積み重ねが協業につながった

なぜそのような重要な開発に外部のパートナーとして我々エピストラをお招きいただけたのか、そのきっかけを改めて伺えますか。

少し長いストーリーになりますが、最初の出会いはもう数年前、たしかコロナ禍の前後くらいだったと思います。当時、同僚から「AIの会社で面白いところがあるよ」と紹介を受けたのが最初のきっかけでした。正直なところ、AIという言葉は当時から流行していて、私自身も「とりあえず話を聞いてみようかな」という程度の気持ちだったのを覚えています。

(小澤)その時のことをよく覚えています。まだオリンパスが分社化する前で、(のちにEVIDENTの初代社長に就任した)斎藤さんの紹介でR&D部門の方々にお話しさせていただいたのですが、その中の一人が瀧本さんでした。初めてお会いした時に印象的だったのは、瀧本さんが「AIの会社はたくさんあるけれど、御社は何が違うのですか?」と率直に質問してくださったことです。そこから弊社の強みや技術などのポイントを説明させていただいたところ、「それなら小さく試してみる価値はありそうですね」と言ってくださって、最初の小規模プロジェクトが始まりました。

当時も多くの外部パートナーと話す機会がありましたが、その中でもエピストラさんの印象は特に強く残っています。高いAI技術の専門性を持ちながら、ライフサイエンスというドメインに焦点を当てていた点が特徴的で、「小澤さんの話をもう少し聞いてみたい」と感じたんです。そこから何度か対話を重ねるうちに、お互いの考え方人となりが少しずつ見えてきて、信頼関係が育っていったように思います。

エピストラさんとはその後、大小さまざまなプロジェクトを10件以上ご一緒するなかで、「このチームは確かに結果を出す」「一緒に考え、形にできる」という実感が積み重なっていきました。そうした信頼の積み重ねが、今回の協業にもつながっているのではないかと感じます。

インタビュー風景
右:株式会社エビデント 瀧本真一様, 左:エピストラ株式会社 小澤陽介

成果の背景には他に代えがたい技術力と伴走力 ── 互いの「三遊間」を拾いに行く姿勢があった

今回の成果を踏まえて、エピストラの強みはどんなところにあると思われますか。

端的に申し上げて、この成果はエピストラさんの協力なしには生まれなかったと思っています。そして何より、このプロジェクトは本当に楽しく進めることができた。その理由を改めて考えてみると、3つの要素があったように思います。

まず1つ目は、高い専門性と技術力、そしてライフサイエンス分野への深い理解です。今回 FLUOVIEW Smart™️に搭載したAIのコア部分は、まさにエピストラさんの技術によって実現できたものです。この点は、他には代えがたいエッセンスだったと思います。

2つ目は、ゴールの共有です。AIを使って何かを「できるようにすること」、つまり個々の要素技術を確立することは、優秀なAI専門家にとっては難しいことではないかもしれません。しかし、私たちが目指したのは「要素技術を組み合わせて製品に統合し、ユーザーに価値を届ける」こと。そのためには、技術への理解だけではなく、ユーザーのニーズやUX設計への理解も不可欠でした。その点で、エピストラさんとは早い段階から同じゴールを共有できていた。だからこそ、開発の中で仕様の整合が生じても、「私たちは何を実現したいのか」という原点に立ち返って、柔軟に解決策を見つけていけたのだと思います。

そして3つ目は、チームワークです。エピストラさんは最後まで伴走してくださいましたし、私たちも、外部委託先ではなく同じゴールを目指す仲間=ワンチームとして一緒に進めてきたという実感があります。開発の中では、進め方が難しい局面も多々ありましたが、お互いの立場や状況を理解し、尊重し合いながら柔軟に、そして創造的に対応できた。

「これは自分たちの領域ではないからやらない」という線引きを乗り越え、「三遊間」を拾いに行く姿勢がチーム全体にあったと思います。そうした協力の積み重ねが成果につながり、今振り返っても本当にやりがいのある、楽しいプロジェクトだったと感じています。

インタビュー風景

AIと機器の連携が拓くライフサイエンス研究の未来

最後に、機器とAIの連携そのものについてのお考えをお聞かせください。

ひと言で言えば、ライフサイエンス研究において「機器とAIの連携」はもは不可欠だと考えています。AIの可能性は顕微鏡の世界に限らず、社会全体で期待されていますし、その重要性は今後さらに高まっていくと思います。

AIの活用にはさまざまな形があります。たとえば、自社の中で業務効率を高める ── いわゆる社内変革のために使うという考え方もあります。しかし、**私たちは「ものづくり」を通じてユーザーに価値を届ける企業です。であれば、AIを社内効率化のために使うだけではなく、製品やサービスの付加価値としてどう活かすか。**そこを追求していく必要があると感じています。

私たちの強みは「ものをつくる力」にあります。AIのアルゴリズムを新しく開発することが得意というよりは、AIをどう使いこなすか。その発想とアイデアを生み出し、形にしていくことに価値があると思っています。だからこそ、エピストラさんのような強力な外部パートナーと連携しながら、R&Dをはじめ、営業・企画・製造といった部門すべてが一体となって、共通のゴールを共有し、ユーザーに価値を届ける取り組みを進めていくことが重要だと考えています。

研究者の方々は日々、科学の限界を押し広げようと努力されています。私たちは、その挑戦を支えるツールを提供しています。かっこよく言えば、煩雑な作業や制約を取り除き、研究者がより『問い』と『仮説』に集中できるようにしていく、そんな未来を目指して取り組んでいければと思っています。

私たちはこれからも仲間とともに、そんな未来を現実にしていきます。

── EVIDENT × Epistra

FLUOVIEW、FLUOVIEW Smart は Evident Corporation およびその子会社の商標です。

今回お話を伺った

瀧本 真一 様
株式会社エビデント

株式会社エビデント

研究開発部門 ライフサイエンス研究分野

バイスプレジデント

瀧本 真一 様